「ただ」は安いか、高いか?

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(1)高速道路の通行料金無料化の社会実験が始まっている。

(2)実験は結果を見て実験計画をやり直すことがつきものである。実験の前には必ず思考実験が必要になる。だからモデルを用いて考えるのである。理論的に考えて想定される結果を知ることなく、実験をするのではコストが多すぎる。失敗する確率をできるだけ少なくするために、実際の実験の前にはあらゆる可能性を考えて思考実験をしなければならない。自然科学においては、理論的な思考に基づいて実験計画を練り、実験を始める。それでも思わぬ事態が生じ失敗することがある。そうするとその失敗をもとに新たに思考を重ねて、再度、実験をするのだ。この繰り返しである。エジソンは、電球の発明をしたとき、記者の質問に対して、「一つの成功の背後に1万の失敗がある」と答えたということを聞いたことがある。

(3)「社会実験」も同じことである。けれども、「社会実験」と「自然実験」との違いの一つは、「社会実験」の場合は、出てきた結果をもとに戻すことが困難であるということである。「社会実験」の結果は、現在の人々の生活に及ぼす影響が大きいのである。

(4)さて高速道路通行料金無料化である。「無料化」とは「ただ(フリー)にする」ということである。

(5)「大学の授業料をただにする」としたら、何が起こるだろうか。まず大学に殺到する人々が増大する。大学に進もうとする人々をすべて受け入れるだけの余力があれば、大学教育への需要を満たすことができる。けれども、そのキャパシティがなければ、「大学教育の質」を落とさない程度に学生数を絞るしかない。そのための工夫が何らかの「入学試験」であり、授業料という価格の値上げである。入学試験もなく授業料もただ、となると、結果は見えている。教室は学生であふれ、「混雑」する。授業料は無料であるから、設備を拡大したり教員や職員を雇う「お金」はない。したがって、「大学教育の質」も低下する。

(6)「大学の授業料を無料にする」ことと「大学教育の質」を両立させる道は、大学教育をうけることを希望するひとに、大学教育を断念させるか、政府が大学の経費をすべて負担することである。

(7)さて、高速道路通行料金の無料化である。「高速道路」というのは「一般道路」と異なる。「高速道路」を利用することによって、目的地に到着するためにかかる時間が節約できるという便益がある。その便益は高速道路を利用する利用者に帰着する。高速道慮の通行料金は、「時間節約」という便益(効用)にお金を払っているのである。高速道路の通行料金を無料化する、ということは、「時間節約」の便益に対してお金を支払わなくてもいいということである。これを「タダ乗り」という。大学教育の授業の無料化と同じである。

(8)当然、高速道路を使う人は増える。「タダより安いものはない」と思うからである。その結果、高速道路を通行する車は増える。目的地に到達するための「時間短縮」には時間当たりの適正な通行量が計算できる。車の通行量と「高速道路を使用すること」による「短縮時間」には負の比例関係がある。大学の教室のように、「混雑」が生じる。「渋滞」が生じ、「高道道路」を用いるメリットである、「時間節約」効果をゼロにし、マイナスにもしてしまう。とすれは結局、「高速道路」の利用は「一般道路」を利用するよりもコストがかかることになり、利用者の効用は減少しマイナスになり国民福祉はさがる。

(9)そればかりではない。大学教育の授業料が無料になれば、他の教育機関たとえば専門学校も授業料を無料にしなければ学生を集めることができないから、やがて倒産しそこで働いていた人は失業する。それと同じで、高速道路の使用料金が無料になれば、高速道路と競合する他の交通機関が影響を受ける。

(10)たとえば、瀬戸大橋の通行料金を下げることによって、島嶼部への交通機関である、フェリー運営会社が路線を縮小し、JR四国の料金収入も減少する。会社は、収入が減少するなら、それに応じて、コストを削減せざるを得ない。赤字路線の廃止、保守管理費の削減等の対策を講じる。それは、事故発生の可能性を高める。民間企業の経営をこのように追いこんだのは、「政府」なのだ、と考える向きがあってもおかしくはないのではないか。

(11)だから政府はそのために、経営悪化に陥った中小・零細企業や地方経済の落ち込みを少なくするために支援することになる。財政支出が増加するのである。

(12)高速料金通行料の無料化がもたらす混雑が、たとえば、瀬戸大橋で起こった場合、四国の病院で対処することができない救急患者を岡山に運ぶにはそれだけの時間がかかるだろう。これは、大きなコストではないか。

(13)「タダより高いものはない」。昔、よく聞いた言葉だ。」

(14)「実験」には何らかの狙いがある。高速道路通行料金の無料化の狙いは何なのだろうか。「実験」にはその「結果報告」がある。それを待ちたい。

(15)「社会実験」のためには「思考実験」が必要なのである。

それでは、皆様、ごきげんよう、さようなら。
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by jedinagare | 2010-08-10 10:38 | 人生の羅針盤  

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